四旬節にあたって(アベイヤ司教様からのメッセージ)
福岡教区の兄弟姉妹の皆様
四旬節にあたって
主は言われる「今こそ、心から私に立ち返れ」(ヨエル2・12)
今年は、新型コロナウィルスのパンデミックの中にあって、四旬節をどのように過ごすことになるのでしょうか。
緊急事態宣言は、県によって解除される日が違います。ある教会では、残念ながら灰の水曜日の典礼を行うことができないかもしれません。
四旬節の早いうちに緊急事態宣言が解除されることを期待します。
こういう状況の中で、灰の水曜日の典礼で朗読されるコリントの教会への手紙にあるパウロのことばを、わたしたちはどう受け止めればいいでしょうか。
「今は、恵みの時、今こそ、救いの日です」
(Ⅱコリント6・2)
この「今」は、わたしたちが自分の弱さを感じ、不安のうちに過ごしているこの時です。
多くの人たちがウィルスの感染によって命を奪われ、また多くの人たちが様々な困難に直面しています。
こういう時に、苦しんでいる人たちに奉仕する人々の姿はわたしたちに希望をもたらします。
人類の歴史に残るであろうこの時を、どのようにして「恵みの時」として、また「救いに目と心を向けさせる時」として過ごすことができるでしょうか。
灰の水曜日の典礼の中で読まれるみことばからヒントをいただくことにしましょう。
まず、預言者ヨエルのことばです。神から離れて苦しんでいる民にヨエルは力強く呼びかけられます。
「あなたたちの神、主に立ち返れ」と。ただ、それは神が下す罰を恐れるからではなく、「主が恵みに満ち、憐れみ深く、忍耐強く、慈しみに富んでおられる」からです。
この「回心」の呼びかけは皆に向けられています。長老、幼子、花婿と花嫁、祭司、すべての人々に。この呼びかけの中心は「回心」です。
そして、この日の福音で朗読されるイエスの山上の説教の一部に、回心へ導く三つのことが示されています。
「祈り」と「施し」と「断食」です。心に留めて実行したいと思います。そこで、皆さんに具体的な提案をいたします。
「祈り」
普段よりも祈りの時間を作ることです。
司祭、修道者、信徒の皆さんに提案します。神様の前で現実を見つめなおし、こういう現実を通して神様が呼びかけておられることに耳を傾ける。
そして、それと同時に、毎日のみことばをゆっくり読んで味わうことを大事にするように勧めます。教区のホームページに毎日の典礼のみことばを掲載いたします。
「施し」
教皇フランシスコが書いておられます。
「日々の人間関係の中でも、助けを求める兄弟姉妹を前にして、その人を神の摂理からの呼びかけとして受け止めることができたらどんなに良いでしょう。ひとつひとつの施しは、ご自分の子どもに対する神の摂理にあずかる機会です。」
特に、パンデミックの情況に合った施しの仕方を探さなければなりません。仕事を失った人々、生活に困っている移住者、深い孤独を味わいながら生活している一人暮らしの方々に、時間と献金をささげることは一つの具体的な施しの仕方でしょう。
「断食」
断食は単に「大斎・小斎」を守ることではありません。ここも教皇フランシスコのことばを引用します。
「断食はわたしたちを目覚めさせ、神と隣人にさらに心をむけるよう促し、神に従う意欲を燃え上がらせます。」
何のために断食するのか改めて考える必要があります。単に規則を守るためでしたら、あまり意味がないでしょう。毎日、断食を余儀なくされている人たちとの連帯を強め、それに応える行動を呼び起こさない限り、イエスが求めている断食から離れることになります。
新型コロナウィルス感染禍のもとで歩む四旬節の道が、お一人おひとりにとって、神に立ち返る「恵みの時」となり、兄弟姉妹に目と心を向ける「恵みの時」になりますように。
今年も教皇様は四旬節のメッセージを発表されると思います。わたしたちに新たな励ましを与えてくださるに違いありません。ぜひお読みください。
皆様の上に神様の豊かな祝福を祈ります。
2021年2月11日
ルルドの聖母の記念日・世界病者の日に
福岡教区長 司教 ヨゼフ・アベイヤ